11月15日
2015年11月15日

「父と母を敬いなさい 」

箴言 3:1-12 エフェソの信徒への手紙 6:1-9


 十戒の第4戒、安息日を守るようにとの戒めと、第5戒の父と母を敬え、この二つ

の戒めが十戒の中心にあり、この二つの戒めだけが「〜してはならない」との禁止形

ではなく、「〜しなさい」と肯定的・積極的な勧めになっています。「ハイデルベルク

信仰問答」では、「父と母を敬え」は、父と母だけでなく「わたしの目上の人に対し

て敬意と愛と誠実さを示すことです」と、社会的な秩序を守るための基本的な戒めと

捉えられています。孔子の教えにもこれと似たような言葉があり、これは人が人とし

て生きるための道徳の要と理解することもできるでしょう。しかし、この戒めが旧約

聖書の中でどのような教えに結びついているかを調べると、興味深いことに、これは

子どもや若い人々に両親を大切にしなさいと教える言葉であるよりも、成人した人に、

老いた両親に対して乱暴にふるまうことがないようにという戒めが、この戒めの本旨

であることが分かります。両親に対して、「打つ」「呪う」(出エジプト21:15,17)、

「侮る」(エゼキエル22:7)、「嘲る」(箴言20:17)、「かすめる」「強奪する」(箴言28:24)、

「圧迫する」(箴言19:26)といった言葉が使われるのです。従って、この第5戒は、

「十戒における両親に関する戒めが意味するところは、具体的に食料と衣服と住居を

もって年老いた両親をその死に至るまで適切に扶養すること、さらに、それを越えて、

彼らの生活の資が取り去られても、親としての地位に対応した敬意を込めた付き合い

と、ふさわしい扱いをすることである。これに、最後は相応しい葬儀も加わる」

(F.クリューゼマン)、ということになります。だとすれば、この戒めは、社会秩序

を守るための戒めというより、社会的弱者を守るための戒め、孤児や寡婦、寄留者を

大切に扱うようにとの社会福祉への視野を広げる戒めということになります。

「あなたの父と母を敬いなさい。そうすれば、あなたはあなたの神、主が与えられた

土地に長く生きることが出来る」という戒めに対して、新約聖書のエフェソの信徒へ

の手紙では「それは正しいこと」として「これは約束を伴う最初の掟です」との注

釈をつけています。次の世代を担う子供を正しく育てることより、年老いた父母を

敬うことが主が与えてくださった土地に長く生きることが出来るという約束なので

す。ここに込められた神の知恵を、わたしたちは正しく洞察することが出来るでし

ょうか。これはただ長生きできるという意味ではないでしょう。神が創造された世

界で神の秩序にかなった調和の取れた世界の中で充実した祝福された命を生きるた

めには、「あなたの父と母を敬うこと」、これが神の戒めであり約束なのです。


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